企業の唯一の目的は「顧客の創造」である(ドラッガー)
ユダヤ系オーストリア人のピーター・ドラッカーは、「現代経営学」や「マネージメント」の発明者として知られていますが、ドラッカーの最も有名な言葉の一つが「企業の目的は、顧客の創造である」という有名な言葉です。
皆さんは「企業の目的は何でしょうか?」と問われた際にどのように答えますか?「社員の生活を守ること」「社会に貢献すること」という答えも正解ですが、そのためには「売上や利益を上げること」が必要です。その売り上げや利益は「顧客」から得ることが必要です。そのためには「顧客に満足してお金を払って頂くこと」を継続させる必要があります。
顧客が生活する社会は時代と共に常に変わり続けていますので、「顧客満足」の形も常に変化しています。特に今日のデジタル社会においては、数年前の大ヒット商品が「懐かしい」存在となることは決して珍しいことではありません。記憶に新しいところでは家庭用のブルーレイなどのデジタルレコーダーのューター)の販売台数は、2000年代に急激に伸びた後、2010年代には逆に急激な下落となりました。現在(2022年)においては、過去のテレビ番組を見ることが出来るネットメディアも多数登場しており、さらに減少していることが想定されます。

このような急激な技術革新や社会情勢の変動によるマクロ環境変化に対して、多くの顧客は未来の自分が何を欲するか、何に満足するのかを企業からヒアリングされても正しく答えられないことも多いのが実情です。「顧客の声」を聞くことは大切ですが、現在の製品やシステムの課題改善を中心とした顧客要望に基づいた事業活動だけでは、「破壊的イノベーション」を画策する他社製品やサービスの後追いをすることになります。
「破壊的イノベーション」とは?

破壊的イノベーションとは、現在の製品に使われている技術とは全く異質の新しい技術やアイデアに基づく新たな製品やサービスの登場によって、市場の構造が完全に「破壊」されることです。
前項で挙げた「デジタルレコーダ」もその典型的な例であり、ソニーやパナソニックといった日本を代表する電機メーカーがブルーレイレコーダやHDDレコーダの性能改善で凌ぎを削っている間に、インターネット技術を駆使した Netfirx などのスタートアップが登場して既存顧客の「映像を楽しむ」市場は完全に変質し、まさに「破壊的イノベーション」が起こりました。家庭用テレビなど他の電機製品でも似たような状況が起こった結果、多くの日本の電機メーカーは経営危機に瀕し、日本経済停滞の一因となったのは記憶に新しいところです。
このような事態を回避し事業を安定的に継続していくためには、企業が最新技術動向にアンテナを高くし、自ら未来の市場ニーズを想像して、そのニーズを満たす製品やサービスを他社に先駆けて世に問うていくこと、すなわち「顧客の創造」が必要不可欠です。
「顧客を創造」するには?
「顧客を創造するために必要な機能は、たった2つしかない」とドラッガーは述べています。その二つとは、「マーケティング」と「イノベーション」です。
★マーケティングとは、「売れる仕組みを作ること」です。
顧客の特性を十分に理解した上で、その顧客の変わり続ける欲求を満足させる手段として新たな製品やサービスを提供し続ける、このサイクルが継続するようにビジネスモデル・システム・組織を作ることが出来れば、売上が途切れることはありません。このような「売れる仕組み」を考えて実現することが、理想のマーケティングです。
日本市場における Apple の iPhone はその理想の姿を作った典型例であると言えます。一度 iPhone を使ったユーザーの 85% が次の機種も iPhone にすると答えている事実が、Appleが作り上げた「売れる仕組み」の成功を示しています。(引用元:https://mobilelaby.com/blog-entry-ios-iphone-android-poll-20160603.html)
★イノベーションとは、「変革をもたらすこと」です。
ドラッガーよりも一足早く、オーストリアの経済学者ヨーゼフ・アロイス・シュンペーターは、1912年に「イノベーションを核とした経済発展理論」の中で「経済発展には企業家によるイノベーションが重要」と提唱し、下記5種類をイノベーションとして掲げました。
・プロダクト・イノベーション(新しい生産物の創出):従来製品と全く異なる新製品やサービスを開発すること。
・プロセス・イノベーション(新しい生産方法の導入):企業の生産工程や製造方法を一新すること。
・マーケット・イノベーション(新しい販売先・消費者の開拓):新市場において、新たな顧客やニーズを開拓すること。
・サプライチェーン・イノベーション(新しい供給源の獲得):商品材料の供給ルートを既存を捨て一新すること。
・オーガニゼーション・イノベーション(新しい組織の実現):既存組織を壊し、仕事の仕方を変えること。
★マーケティングとイノベーションは、「創造」と「破壊」を意味します。
「顧客を創造する」ための2つの機能である「マーケティング」と「イノベーション」は、常に変化しつづける社会環境において、企業活動を継続していくためには必要不可欠です。特に21世紀におけるデジタル革命の時代においては、以前とは比較にならないほどのスピードで「顧客を創造」していくことが求められると言っても過言ではありません。
「顧客の創造」ワークショップ
活知恵では、貴社の「顧客の創造」に伴走するために、「顧客の創造」ワークショップの企画/運営を行っています。このワークショップでは、「マーケティング」と「イノベーション」の考え方に基づいて、参加者ご自身で新たな商品やビジネスを創案して頂くために、以下のプロセスを実行します。
<Step-1 :テーマ設定> 自らが「顧客の創造」に挑戦する事業領域を仮に定め、挑戦するテーマを明文化します。(例:「高齢化社会における認知症患者の生活を支える事業」)
<Step-2:情報収集> 上記のテーマに関連する市場や他社の最新情報を出来るだけ多く収集して現状を把握します。
<Step-3:自己理解> 上記のテーマに取り組むにあたっての自社や自身の現状や課題を出来るだけ客観的に列挙、強みや弱みに分類して整理します。
<Step-4:ロジカル分析> ここまでに蓄積した情報を基に、SWTO分析/3C分析などのフレームワークを使って、現在の状況をロジカルに分析します。
<Step-5:STP分析> STep-4の結果も踏まえながら、市場の細分化 (segmentation)、ターゲット市場の選定(Targeting)、そのターゲットにおける自社の立ち位置(Positioning)を考察します。
<Step-6:ビジョンの明文化> ここまでの検討結果を元に、その新事業におけるビジョン(あるべき姿)を明文化します。(例:「一人暮らしの認知症患者が自宅でも幸せに人生を送り続けることが出来る IoT システムにおいて日本ではトップシェアの企業となり、持続可能な高齢化社会の実現に貢献する」)
<Step-7:実現ストーリーの作成> ビジョンと現状とのギャップを段階的、現実的に埋めていくための道筋をHop/Step/Jump の最低3段階で検討し、実現に至るストーリーを創案する。
<Step-8:製品/サービスの具体化> 上記ストーリーのうち、Hop もしくは Step レベルを実現するための製品やサービスはどのようなものなのか、具体的なシステム構成やサービスメニュー構成などを仮説として立案する。
<Step-9:ビジネスモデルの立案> 上記の製品やサービスを活用して、どのように売り上げ/利益を継続的に得ることが出来るか、その事業の実行にはどのような役割を持った組織や仕組みが必要で、それらによって、どのようなビジネスモデルが実現できるかについて仮説を立てる。
<Step-10:ビジネスサイズの想定> 上記の仮説が実現された際の5年後、10年後のビジネスサイズを出来るだけ客観的な数値にビジョンに基づいた想いを掛け合わせて想定する。(例:5年後/10年後の日本における高齢者の推定人数x認知症患者比率xそのターゲットにおける自社システムの採用率(想い)xビジネスモデルに基づいた顧客一人当たり売上高)
<Output-1 :ビジネス企画書の作成> ここまで集めた情報、ビジョン、創案したアイデア、実行計画などを整理して「企画書」を完成させます。本ワークショップの初期段階に、企画書のテンプレートを配布しますので、ここまでの各ステップにおけるアウトプットを順次記入していけば、最後は全体を通してのストリーの整合性をとる作業が中心となります。
<Output-2:企画創案シートの作成> 上記企画案を1枚のページに要約した「企画創案シート」を作成します。実際にはこの1枚のみがマネージメントの目に触れることが想定されますので、ポイントを押さえた文章や分かりやすい説明図(1つ)などを用いて、自分の企画案を分かりやすく伝える工夫が必要です。
<Goal:3分間ピッチ> 上記の企画創案シートをマネージメントに配布した上で、3分間で自分の想いと考えを述べる「ピッチ」を行って頂きます。